【標高約775メートルの登山道で出会ったホンドオコジョ:長野県北アルプス山麓 松本市】2015.7.28


「標高1000メートル以上にしかいない」と言われているホンドオコジョ。
夏の涼と夫の軽い運動、私の趣味のチョウ撮影で行った松本市の北アルプスへの登山道で7月15日、夏毛のホンドオコジョに出会いました。標高約775メートルの場所です。私は30分ほど、夫は1時間ほどホンドオコジョを観察できました。



ちょろちょろと山側から夫の前に姿を現したのはホンドオコジョ。オコジョを初めて見る夫は「リスみたいな生き物が草むらに入ったよ」と、声をかけてきます。

「リス?!」
リスの写真を撮りたくても、北海道で出会っただけで、本州ではリスに出会ったことのない私は興奮してしまいます。

そこへ草むらからちょこちょこ出てきたのは、黒っぽい毛で、イタチみたいな小さな生き物です。その大きさと動き方で「オコジョじゃないかな」と、すぐにピンときました。上の写真が実物よりもちょっと小さめに感じますが、ほぼこんな程度の大きさで、片手に難なく乗る大きさです。

青春時代の10月、北アルプス西穂独標に日帰りで登った時に白い冬毛のオコジョに出会い、その感動は今でも覚えています。岩の間に入ったり出たり。つぶらな瞳や動きが非常に可愛くって、フイルムカメラで何枚もシャッターを切りました。

オコジョって「山岳」と呼ばれるところにいるんじゃないのかな・・・
かなり疑問もありましたが、人をあまり恐れず、ちょこちょこ動く小さな生き物はオコジョに間違いないと、カメラを向けながら、できるだけ動かないように観察しました。

草むらに入った時には、背中付近の草をそうっと動かしましたが、しばらくそこにうずくまっています。
逃げようとするわけでもないので、そうっとその場から離れ、出てくるのを待ちました。

草むらから出てきたオコジョは、山からしみ出る水のところにやってくると、静かに水を飲みだしました。「そっか、喉が乾いていたんだね」そんなオコジョの写真を何枚も撮りました。

その中の一枚ですが、可愛いんです。左足を見てください。
ちょっと足を上げて、警戒しながら左側を見ています。立てている尾っぽの先が黒っぽいのが見えますね。


オコジョの後ろ側が山です。
天然の水が登山道に普通に流れ出ているところですが、ここは川ではありません。

オコジョが登場する前は、ミヤマカラスアゲハが4頭、スジボソヤマキチョウが数頭、ここで給水していました。こういうところで喉を潤すのはチョウだけではなく、オコジョも利用していたんですね。もしかしたら他の動物たちも、こういうところが水飲み場なのかもしれませんね。

オコジョが出てきてからはミヤマカラスアゲハや、新鮮なスジボソヤマキチョウどころではなくなりました。
わかりますよね。

その後オコジョはこのまま方向転換し、後ろの岩場の方に向かいます。



今度はぴょんぴょん岩場を走ります。
その動き方が可愛いんですよ。

その後、草むらへ。


再度水飲み場へ来た時は、私の足元をちょろちょろ。
なんの警戒もしていないかのようでしたが、耳はちゃんとピンと上を向いていますね。おそらくカメラのシャッターの音などを敏感に聞いていたのでしょうね。


ところでこの場所って、夫のかつての仕事場だったんです。
松本市や以前の波田町に住んでいた時に、この付近に夫もしょっちゅう出没していました。「別にオコジョに会っていたわけではない」と、言っていますが、きっと注意していなかったのか、あるいはその頃はオコジョがここに出没していなかったのかも知れません。

実はこのすぐ下に、夫が時々通っていたという建物があり、そこには小さなネズミがよく出たんですって。そのネズミを狙ってか、ヘビもよく出たようです。もしかしたら今もいるのかもしれません。

「ここによくヘビが絡まっていて、それを振り払ってから中に入った」と、そんな話を帰りに聞いたら怖くなりましたが、ネズミはともかく、ヘビに出会わなくて良かったと思った次第です。

その建物が近くにあったために、標高をある程度細かく知ることができた訳ですが、地図だけだと漠然としか分からなかったでしょうね。

私はオコジョは山岳にいるものと思っていました。これは単なる憶測ですが、ここにネズミなどの餌がいることで、この一帯をテリトリーとしていると考えてもおかしくない訳ですよね。

気になることはいくつもあるのですが、その一つは30度以上にもなる夏の気温です。
決して高原と言えるような標高の高い場所でもないので、信州の山とは言え、30度程度の気温は、普通に何度もあるでしょう。オコジョって、そんな温度に強い生き物なのでしょうか。

また、出会った場所は山の中ですが、もう少し下れば民家もある場所です。民家まで下ればネズミも普通にいるでしょうから、餌には事欠かないでしょう。しかし、建造物のある夫の元仕事場と言い、民家の近くと言い、普通そういうところにオコジョが住むのでしょうか。

ある程度広いテリトリーを持つと言うオコジョについても考えてしまいます。
山麓でツキノワグマが出没した時に、地域の猟友会の方から「弱いクマほど山の下の方に住むよ」と聞いていました。

なぜなら、山の中の餌がたくさんあるいい場所は、力の強いクマたちの住処になっているようです。
そのために、力の弱い小熊などは、その場所から追い出されて、仕方なく民家の近くにまで出没するとのことです。

このことがオコジョにも当てはまるかどうかは分かりませんが、オコジョが高い山の中ではなく、少し下れば民家があるような場所にいるということは、クマの世界と何か共通するものがあるのではないかと考えてしまうのです。

私たちが出会った場所がオコジョのテリトリーであるならば、かなり真剣にならないといけないと思い、場所の公表は控えさせていただきました。

そして、標高の低い方に下らなくてはならないほど、オコジョが増え広がったのか。だったら、各地でオコジョの目撃例があるはずです。あるいは山ではオコジョの餌となるネズミなどの小動物がいなくなったのか、そこら辺を環境に詳しい方にお聞きしてみましたが、その実態は分からないそうです。

もう一つ心配がありますが、この山に猛禽類がいます。
この2週間ほど前にもここに来ていますが、その時にハトのような複数の鳥がけたたましく鳴きわめくのを聞いて、山の方を見ると、木々の間に猛禽類がいたのです。ちょうど野鳥たちの営巣の時期ですので、襲われたのかもしれません。猛禽類の種類などは分かりませんが、おそらくオコジョにとっても天敵の一つでしょう。

実は今回オコジョに会い初めて知ったことですけど、長野県にいるオコジョはホンドオコジョって言うんですって。ホンドオコジョよりも体が大きな北海道のエゾオコジョと区別してのことみたいですね。

そして、その長野県のホンドオコジョは長野県の天然記念物に指定されていました。

いつかまた、そこでオコジョに会いたいですね。とにかく可愛かったんですから。


PIXTA登録写真



ホンドオコジョ Mustela erminea nippon
イタチ科

環境省レッドデータブックでは準絶滅危惧。
レッドデータブック長野県版でも、準絶滅危惧。
長野県の天然記念物に指定されています。1975年(昭和50年)11月4日指定


《追加情報》

【小谷村のオコジョ】2015.8.31

北アルプス山麓の小谷村誌「自然編」(平成5年発行)の中で、小谷村のオコジョについての興味深い記述がありましたので、ご紹介します。

小谷村は、長野県の北部に位置し、県有数の豪雪地帯です。標高は新潟県境の姫川温泉の262メートルから、北アルプス小蓮華岳の2769メートルと、非常に高低差があり、原生林に囲まれた大変自然豊かな村です。そんな小谷村にもオコジョが生息しているようです。

小谷村誌によれば、ホンドオコジョは「ネズミ・ノウサギ・鳥の卵・昆虫などを食べており、猟師は『山の神の使い』といって撃たない」とのこと。住民から大事にされていた生き物なんですね。

小谷村でも1991年から1992年の間に横平というところで目撃例がある他、栂池では毎年目撃されていたようです。

また、糞発見の記述もあり、1980年に神ノ田圃(たんぼ)から栂池自然園の間、天狗原、白馬乗鞍岳でオコジョの糞が発見されているようです。

栂池自然園の標高は約1900メートルで、ミズバショウ、ワタスゲなど、多くの山野草が咲き乱れ、毎年多くの観光客で賑わう場所です。

神ノ田圃湿原は栂池湿原の近くにあるミズバショウの小さな湿原で、標高約1700メートル。天狗原湿原は、栂池自然園からさらに登った高層湿原で、標高2200メートル、北アルプス白馬乗鞍岳は2450メートルです。

糞の採集もあり、1991年、風吹大池、天狗原で糞が採集されています。
風吹大池の標高は1778メートルで、神の田圃の水がそこへ流れているそうです。

目撃例の「栂池」とは、地図上では栂池自然園よりもさらに下で、ゴンドラリフトが通ってる栂池高原一帯のようですが、標高は不明です。

もう一つの目撃例の「横平」は、地図で示された地点では、小谷温泉を目指して国道148号線を北東に入り、中谷川の北側、大渚山の山中のようですが、地図上での地名もなく、詳細は不明です。

いずれにしても、小谷村では目撃例以外は標高1700メートル以上の場所で、湿原ということもあり、水には不自由しない場所だというところまで分かりました。

きっと多くの生き物たちも、自然豊かな小谷村の湿原などの水を利用しているのでしょうね。またどこかで目撃があれば、話題になるかもしれませんね。楽しみに待ちましょう。


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