【1月のイソシギ 安曇野で越冬か?:長野県北アルプス山麓】2017.1.21


チドリ目シギ科のイソシギをこの1月12、13日の両日、長野県北アルプス山麓の南の安曇野で確認しました。

鳥インフルエンザが騒がれ、コハクチョウやカモなどが飛来する場所へは立ち入り禁止となっている安曇野ですが、ヒョンなところにマガモやカルガモたちが戯れていたり、その付近の用水路の浅瀬では、餌を求めてくちばしを水に入れたり出したりする小型の野鳥たちがいました。

住宅地に近いその場所には大きな水路も流れていますが、ちょっと奥まったところには、浅瀬もあります。そんなところにセグロセキレイや、夏には山で見るキセキレイを見て、「山には餌がないから、キセキレイは冬には里に下りて来ているんだ」と、妙に納得していました。

今年は雪が少ないとは言え、日陰には雪もありますが、水路の浅瀬には土も見えます。そんなところに水生昆虫がいるのでしょうね。そんな場所で、コンクリートの上から下の水路や浅瀬を覗き込んでいたのがこのイソシギです。

イソシギ:2017年1月12日撮影

長いくちばしで、お腹が真っ白。お尻を上下させながらさえずり、ちょこちょこコンクリートの上を歩き回っています。

実を言うと、この鳥を見たのは初めてなんです。
当然名前が分かりませんでしたが、くちばしからしてシギの仲間なんだろうなと思って、調べていました。イソシギだと確信が持てたのは、背中の方に切れ込むような白い模様と目の付近を貫く黒い線からです。名前には「イソ」が付きますが、海辺の生き物ではなさそうです。

イソシギ:2017年1月12日撮影

そんなイソシギって、私の住む北の安曇野では目にしたことがありませんでした。
南の安曇野の遊水池も気になっていましたが、今年は鳥インフルエンザの予防とやらで、立ち入り禁止。昨年まで時々、コハクチョウやカモなどの撮影に通っていましたが、珍しいカモやカワセミやタゲリをもう一度撮影したいと思っていても、なかなか思うようにいかないので、今年は諦めていました。

ところが水鳥に関係するある情報を夫からもらい、「とりあえず行ってみようかな」と、出かけたことがきっかけで、この鳥に初めて出会ったというわけです。

イソシギ:2017年1月12日撮影

最初に出会ったのは、結構流れが早い大きな水路にいるマガモとカルガモでした。そんな水鳥たちをカメラで追いながら、車を走らせていた時に、ムクドリの群れを見つけました。ムクドリとの出会いはあまり嬉しいものではないのですが、一応カメラを向け、証拠写真を撮ります。でも私に気づいたムクドリは一斉に飛び去って行きました。

また数メートル車を進めますと、右手の土手にカルガモの群れに混じってマガモが1羽、休んでいます。そのマガモの脇に、スズメよりも大きく、鳩よりも小さな小鳥がちょこちょこと歩いていたのです。ムクドリのように長っぽく感じません。何だろうとカメラを向けると、コンクリートの上を逃げるように歩きながら移動を始めました。

ただ、長いくちばしだけが目立ったのですが、車から降りてゆっくりと追いかけました。小鳥はコンクリートの上から、水路ばかりを気にしていましたが、そこに何があるやら私には全く分からないのです。

と、その瞬間、小鳥は水路に飛び降り、姿を消してしまいました。でもまた目の前に姿を現してくれました。そして上流の水路に移動してくれたのです。それが下の浅瀬です。

ここには留鳥と思われるオオバンが一羽いましたが、私に気づいたオオバンは、丈の高い草むらに身を隠してしまいました。でもこのイソシギは長いくちばしで水の中をつついているのです。こんな浅瀬に何がいるのか分かりませんが、水生昆虫がきっといるのでしょうね。冬の間の野鳥たちの餌になる生き物たちが、こうしたところにもいるのだと、その時に気づきました。

イソシギ:2017年1月12日撮影

この頃は、まだたくさんの雪が降っている安曇野ではありませんが、このイソシギが越冬しているのかどうかが気になり、翌日もこの場所に行って見ました。


いました、いました。翌日の13日にも、同じ場所にいてくれました。
やはり、水路が気になるようで、川の流れを見下ろしています。

イソシギ:2017年1月13日撮影

前日よりは、幾分余裕を持って近づきましたが、やはり一定の距離を保っているのはイソシギの方でした。
500mmのレンズでさえも、これがやっとの大きさです。

水の浅瀬に入ったところで、餌を探し始め、水の中に長いくちばしを入れたり出したりを繰り返しています。
正面から見ると、鳩のようにこんもりとしたお腹でしょ。太っているように見えてしまいますね。

イソシギ:2017年1月13日撮影

でも、そんなには太っていませんよ。くちばしが長いので、その分、スリムに見えますね。

イソシギ:2017年1月13日撮影

この後、安曇野では3日ほど雪が降りました。寒さがきつくても、きっとこの水路は凍結することもないでしょうし、雪が降っても私の住んでいる北の安曇野よりもさらに南で標高も低いですので、水生昆虫を見つけて飢えをしのいでいるのでしょうね。

図鑑によれば「留鳥として全国に広く分布する」と、ありますが「中部地方以北では夏鳥」と、あります。ここ南の安曇野で越冬できるとすると、長野県内の他の場所でも冬に見ることができるのかもしれませんね。

雪があるうちに、またこの場所を尋ねて見たいなと思っています。


【後日談】2017.1.25

最初の出会いは二日とも標高520メートル弱の浅瀬でした。積雪や氷点下が続く24日、気になって同じ場所に行ってみました。でも、カルガモやマガモの姿は確認できましたがそこにはおらず、再々確認できた場所は、そこから200mほど南の別の河川の浅瀬で、やはり一羽のみでした。

イソシギ:2017年1月24日撮影

イソシギがいた河川にはコガモがおり、コガモもイソシギも川の中に頭を突っ込み、餌を探している様子を確認できました。
夜は氷点下の厳しい寒さが続く安曇野ですが、やはりそこはイソシギが選んだ越冬地なんでしょうね。川には所々に身を隠せる草むらもありますし、歩けるほどの浅瀬もあるのですから。

水路の周辺には所々に雪があります。北の安曇野ほど積雪がある訳でもないので、きっと過ごしやすいのでしょうね。
多くのイソシギが冬には暖かい地方に移動するようですが、このイソシギは恐らく餌が豊富なこの場所を自ら選んだのかも知れません。

越冬の北限ってどこなんでしょうね。ちょっと探してみましたが、分かりませんでした。

面白いことに、その水路を少し遡ってみたのですが、カモやサギたちがいた場所は限られた住宅地の近くばかり。水田などがある上流の水路には水鳥たちの姿がありません。人間が近くにいることで守られる何かがあるのか。あるいは魚を飼っている池などもあるので、餌が豊富なのかも知れません。イソシギもそんな場所で水鳥たちと一緒に越冬しているのでしょうね。

今年は特に寒波が激しく、今年に入ってからも松本市や安曇野市の最低気温はマイナス6、7度など、北アルプス山麓は氷点下続きです。
そんな北アルプス山麓で越冬するたくましさに、感心するばかりです。無事に冬を乗り越えてほしいですね。


【さらに後日談】2017.1.30

4回目の現地を訪れたのは、1月28日の午前中でした。
最初に出会った場所を探しましたが、見当たりません。マガモ、カルガモの他に、ヒドリガモのカップルを東側の用水路で確認できましたが、イソシギの姿はありません。

3回目の場所に行こうかなと思っていた時、「あれがそうではないですか?」と、お仕事をしている男性に言われ、望遠レンズで確認しましたら、まさにイソシギでした。私からは遠くてはっきり見えなかったのですが、セキレイほどの大きさに見える小鳥が、お尻を上下に動かしながら、草むらで餌を探していました。

水のあるところを覗き込んだり、草むらを探索したりを繰り返しながら、近づいてくるのです。そして、私との一定の距離を確認すると、ちょっと離れたところに舞って移動しました。

羽を広げて飛ぼうとするイソシギ 2017.1.28

イソシギの姿のことや、何度も現地を訪れていることなどを男性に話しますと、そこの河川のことや水温のことなどを教えてくれました。

そこを流れている河川は犀川とは繋がっているようですが、犀川の支流ではないとのことです。「伏流水ですか?」と尋ねると「まさにそうで、犀川の水は一滴も入っていない」のだそうです。そのために水温が高く、冬でも8度ほどあるとのことでした。

だからそんな暖かな水温の浅瀬を選び、越冬していたのかと、納得できました。

恐らく下流からでしょうが、その河川には冬にはアカウオが入ってくるそうで、また春になるとアカウオは犀川に戻っていくそうです。そんな話を男性が話してくださいました。

そう言えば20年以上前に、知人の男性がまだ小学生の頃、「アカウオを高瀬川で取る」ということを、聞いたことがありました。その方は当時小学生で、私の長男よりも少し年上でしたが、長男を連れて川で遊んでくれました。まだ子供でしたのでアカウオ取りは遊びのうちだったのでしょうが、犀川上流の別の名前の支流の川では見たことのない魚に、ちょっと驚いた記憶がありました。

魚のことは私はほとんど知りませんが、押野崎で犀川と高瀬川が合流しているので、アカウオは、両方の川を行ったり来たりしているのかもしれませんね。そんなアカウオなど魚が水鳥たちの餌になっていのかもしれません。

魚はイソシギの餌ではなく、水生昆虫が餌であることなどを、出会った男性にお話しました。図鑑などで調べた知識でお伝えしたのですが、イソシギが敵でないことを妙に納得してくださいました。

周辺でカワウ、コサギ、チュウサギなどにも出会っていますが、彼らは年中魚を狙ってその周辺を縄張りにしているのだろうと思いました。

当日、そんな水辺で生きるカワウ、カルガモ、ハクセキレイ、そしてイソシギが、たまたま一緒にいるのを確認することができたのですが、争うこともなく、お互いの存在を尊重し合っているのには感心させられました。

カワウ、カルガモの左側にちょこんといるイソシギ。左下のぼんやりしているのがハクセキレイ。2017.1.28

野生生物たちの生き方と、「難民は受け入れない」などと言う、人間界の醜い争いを重ねて考えると、野生生物たちの方が人間よりもはるかに「愛」があるのを感じました。

1月もそろそろ終わりで、30日の今日は気温が緩んで雨が降っています。でも、まだまだ厳冬の冬が終わったわけではありません。
他の水鳥たちと一緒に、たった1羽のイソシギが、無事に冬を乗り越えて欲しいと願わずにはいられませんでした。



【イソシギ】
Commom  Sandpiper
チドリ目シギ科

環境省にも長野県にも、レッドデータブックに記載がない、いわゆる普通種です。
図鑑によれば「留鳥」で、中部地方以北では夏鳥とのこと。

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