【ニュウナイスズメさん マイマイガの幼虫でも採ってくれないかな:長野県北アルプス山麓白馬村】2015.6.2


頭から背中にかけて赤く見えるニュウナイスズメを6月1日、長野県北アルプス山麓白馬村の山裾で見つけました。
小鳥のさえずりを聞きながらチョウの撮影を楽しんでいましたら、一羽の野鳥が電線に止まります。


山裾の電線に止まるニュウナイスズメ:長野県北アルプス山麓白馬村 2015年6月1日撮影

のんびりと電線に止まってさえずっているので、何回かシャッターを切ることができました。下から見上げたニュウナイスズメは、ほっぺが白く見える程度で、体の色はあまりはっきりしません。でも右や左を向く時に、時々目がキラリと輝きます。

ある程度遠くから見るので、大きさもスズメよりちょっと大きいかなと思ってしまったくらいです。でも、図鑑では14センチ程度とあります。大きさはスズメとそんなに変わらないですね。

「本州中部以北で繁殖する」とのことなので、冬の間は日本の中でも比較的暖かな地域で過ごし、初夏には北アルプス山麓に来て、ここで繁殖するのでしょうね。

しばらくさえずってから、山の方に舞い去りました。翼を広げた飛翔姿から、やっと体の色がわかりました。鮮やかな赤茶色ですね。


山の方に向かって舞うニュウナイスズメ:長野県北アルプス山麓白馬村 2015年6月1日撮影

山麓でのご馳走は、昆虫かしらね?とすると、心配事も頭をよぎります。
ギフチョウ、ヒメギフチョウ、ヒメシジミなど、チョウの幼虫たちも簡単に見つけられちゃいそうです。

山麓に訪れたニュウナイスズメさん、せめてこの3年ほどで大いに増えた、マイマイガの幼虫でも採ってくれたら嬉しいな。


ニュウナイスズメ Passer rutilans
スズメ科




《追加情報その1》
【小谷村のニュウナイスズメ】2015.8.31

白馬村の隣村、小谷村誌自然編にニュウナイスズメに関係して興味深い記述がありましたので、ご紹介します。小谷村でもニュウナイスズメは希少繁殖鳥となっており、アカショウビンの他、ブッポウソウが加えられていました。

小谷村誌自然編によると、ニュウナイスズメは「北海道では普通に繁殖するが、本州では、上信越地方、東北地方などの一部に限られ、局地的に繁殖例が報告されている」とのことです。

北安曇誌第1巻自然から引用しており、それによると「年平均気温10℃以下の等温線と、根雪期間が年100日以上の線との交線を中心として、やや日本海寄りに移した所ということになっている」とあります。

ふ〜ん、白馬村や小谷村の中で、年平均気温が10℃以下という場所と言えば、北アルプスか、その直下の山の中くらいなもの。
さて、どこだろうと思いますよね。

1947年から1951年にかけての5年間の調査で、小谷村内の19カ所で観察例が報告されています。
その中には、白馬村との境の梨平、古くからある山の中の温泉で有名な小谷温泉、池の周辺にブナの大木がたくさんある鎌池、新潟県境に近い大網、横川、日本海が見えるという戸土(とど)などの地名もあります。

山中の人家の庭や付近の山林にすんで、キツツキなどが開けた樹木の穴を利用するみたいですので、繁殖のシーズンになると、以外と私たちが観察するチャンスはあるのかもしれませんね。

とうことで、また新たな情報があればアップします。



《追加情報その2》
【白馬村のニュウナイスズメ】2015.9.2

「白馬の歩み」白馬村誌 第1巻 自然環境編によると、ニュウナイスズメは、ホオアカ、アカショウビンと並び、白馬村の希少繁殖鳥となっていました。

また、北安曇誌 第1巻「自然」(発行昭和46年・1971年)812ページによりますと「ニュウナイスズメは、多雪地帯の5〜6月の気候が低温多湿であることに密接に結びついた繁殖分布をしており・・・低標高地帯の村落付近に高密度に分布し、中央部の高標高地帯の低密度に分布するのと対比して、興味のある生態的分布を示している」そうです。

ここで言っている「中央部」とは、軽井沢、松本、諏訪などを中心とする「長野県内の中央部」を指しています。また北安曇郡、下高井郡、下水内郡などは「北半が属する信越国境の多雪地帯」に含まれており、ここで言う「北半」という言い方は近年使いませんが、「郡内の北の半分」、もっと簡単に言えば、郡内の北側に位置する地域と言う意味で理解します。



《追加情報その3》
【大町市のニュウナイズズメ】2015.9.2

北安曇誌第1巻「自然」には、ニュウナイスズメに関して多くのページ数を用いての記述がありました。その中の興味深い点をご紹介します。

北安曇誌第1巻「自然」によると、ニュウナイスズメは1950年6月16日に、木崎湖畔で羽田健三氏によってオスが採集されたのが生態的新記録鳥となっており、現在その個体は大町山岳博物館が所蔵しているとの記録があります。

小谷村では1950年にブッポウソウが「普通鳥」の新記録鳥となっており、大町市内では1950年から1954年にかけて、普通鳥の新記録鳥としてホシハジロ、ホオジロガモの2種が、同じく普通鳥の生態的新記録鳥がニュウナイスズメの他に、ノビタキ、エゾセンニュウ、オオミズナギドリ、アオバトの5種をいずれも羽田氏が採集し、同所で所蔵しているとの記録がありました。

「普通鳥」以外には「稀鳥」があり、今では稀鳥に相当するのが迷鳥や絶滅危惧種なのかもしれませんが、その稀鳥の中の「旅迷」に分類されていました。現在では絶滅した「トキ」が1916年11月6日に大町市美麻青具で採集され、大町山岳博物館が保存しているという記述があり、標本が残っていることは聞いていましたが「ここにそれが書いてあったのか」と、驚かされました。トキは、採集者もオスメスの区別も分からないようです。

当時の記録は観察例が非常に少なく、ほとんどが採集です。どのように野鳥たちを採集したのか、その方法がわかりませんが、確かに大町山岳博物館や骨董品屋さん、その他に個人宅などあちこちに剥製があるのを見ると、現在では貴重な記録なんだと思うばかりです。

ところでニュウナイスズメの繁殖地としては、「年平均気温が10℃以下」、「年100日以上の根雪期間」という記述も含まれており、北アルプス山麓では小谷村、白馬村、大町市が列挙されていました。

いずれも生木の梢や古木にある、コゲラなどの古穴などを利用して営巣しているようです。よく観察したなと思うのですが、「巣作り期にヨモギやカラマツなどの青葉を巣の中に入れる」こと、しかも「オスだけがそれを運ぶ」など、興味深い記述がありました。

また、「産卵は一日1卵ずつ早朝に行われる」こと、「抱卵日数は多くの場合13日間」、「ヒナはふ化後16日目ぐらいに巣立ってゆく」そうです。

観察例も興味深かったのですが、大町市青木湖畔では、1947年6月14日にニュウナイスズメの育雛が、1951年5月8日に抱卵と育雛がそれぞれ別の地点で観察されています。

また中綱湖畔では1951年5月3日に、営巣の観察例が挙げられていました。いずれも今から60年以上前、と言うより終戦後まもなくの観察例です。

1947年といえば、終戦の2年後のことです。大町市の片田舎です。学者さんが調査されたとはいえ、食料も今のように豊富にあったわけではない時代に、鳥を捕まえても食料にしたわけでもなく、貴重な記録を残したことに頭が下がります。

また1901年〜1945年中央気象台日本気象図により作成された信越国境の月平均気温が表で示されており、「大町」の場合は10、0℃で、生息存否の欄は「×」となっていましたが、「平」つまり、青木湖、中綱湖を含む現在の大町市平地域は8、8℃で「◯」が付けられていました。

温暖化と言われている現代にどの程度当てはまるかは分かりませんが、2015年の今年は例年にない大雪だったことを考えると、今年ニュウナイスズメに出会えたのは大雪のせいだったのかなと、ちょと嬉しくなりました。


一方、大町市史第1巻「自然環境」(昭和59・1984年発行)でも、ニュウナイスズメについて興味深い観察記録を扱っていました。

ニュウナイスズメが北アルプス山麓で繁殖しているしているというの最初の発見は1946年(昭和21年)のようで、珍しい冬の記録として、1947年1月に「青木湖畔で雌1羽を確認」していた他、「青木湖付近から北の姫川谷には、村落周辺に多数繁殖しているのを発見した」などと言う、記述がありました。

観察例の一覧表では上記1947年1月10日の発見は「雄」となっており、積雪1.5メートルの佐野坂山とのこと。佐野坂高原スキー場が開設したのが1960年(昭和35年)ですので、スキー場からの観察ではなく、戦後のまだまだ激動していた頃の正月過ぎに、かんじきを履いて身の丈ほどの雪の中を歩いて探鳥していたことを思えば、大変な努力をしたものだと、ただただ感服するばかりです。

同年6月には「佐野坂山で1巣を発見」しています。地図には佐野坂名の山はありませんでしたが、佐野坂(さのさか)スキー場のある、大町市と白馬村の境の山だと思われます。

繁殖分布限界線を、学名から「ルティランス・ライン(Rutilans Line)」と命名したようです。素敵な名前ですね。

「日本海側の多雪地帯に属する700〜800m、上部クリ帯・ブナ帯の村落付近の林縁に多数営巣し・・・」とあり、北アルプス山麓では低標高地に営巣しており、1949年の10月6日、「木崎湖北岸海ノ口刈り入れ前の稲田の電柱に鈴なり」など、他に記録のない秋の貴重な記録を加えてました。


そんなニュウナイスズメでしたが、近年の観察記録など詳細は不明です。でも、また会えますように。

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