【ヒメシジミの挑発にも動じないアサマシジミ:長野県北アルプス山麓】2015.7.29

ヒメシジミ♂がアサマシジミに近づく。奥ヒメシジミ♀:長野県北アルプス山麓 2015.6.20撮影

もう標高が低い位置のアサマシジミの時期ではないかも知れないのですが、6月に撮影した写真の中に、ヒメシジミの挑発にも動じないこんなアサマシジミがいましたのでご紹介します。

これは、前回ご紹介したアサマシジミとは別の個体です。

エビラスジで吸蜜中のアサマシジミは手前で、これはオスです。 奥にいるのはヒメシジミのメス。

そこへお節介のヒメシジミのオスが下からやってきます。追い出したいのか、蜜を吸いたいのか、メスが気になるのか、はたまた喧嘩をしたいのか?

でもヒメシジミは、すぐには何かをしようとしません。一旦引き上げます。手前アサマシジミ♂の吸蜜:長野県北アルプス山麓 2015.6.20撮影

手前アサマシジミ♂の吸蜜:長野県北アルプス山麓 2015.6.20撮影

ヒメシジミはヨモギ、アザミ、イタドリなど、いくつもの食草があり、チョウとなってからも、エビラフジ、アザミ、ヒメジョオンなど、色々の花の蜜を吸って生活します。

一方アサマシジミはマメ科のナンテンハギやイワオウギなど、場所によって生育している食草が違いますが、この産地ではエビラフジしかありません。

エビラフジで卵からかえり、幼虫の間はエビラフジを食べます。そして蝶になってからは、エビラフジや周辺の花の蜜を吸って生活します。

なので、この産地のアサマシジミにとっては、特に幼虫の間は、この赤紫のエビラフジだけが頼りなのです。

たくさん食草があるヒメシジミと違って、産地によってはナンテンハギだけ、あるいはイワオウギだけなのでしょう。

私が知っている産地では、複数のマメ科の植物が一緒に生えてはいません。しかも、このエビラフジでさえ、あちこちにたくさんあるわけでもなく、局所的に点々とある程度なのです。

ただ、ちょっぴりヒメシジミよりも体が大きく、表翅の青の色合いが若干違うこともあり、ヒメシジミにとっては、アサマシジミが脅威なのかもしれません。きっと、別の種類だと認識できるんでしょうね。

テリトリーというのもがこのヒメシジミたちにもあるのかどうかは、ヒメシジミに聞いてみないと分かりませんが、おとなしく花の蜜を分け合っている時もあるのに、このヒメシジミのようにひっきりなしに挑発してくるチョウもいるのです。

あっ、ヒメシジミのメスが吸蜜に来ましたね。奥の方にいたメスかしらね?

アサマシジミは、上の方に行き、場所を譲ったのでしょうか。

2頭のヒメシジミ♀とエビラフジで吸蜜するアサマシジミ♂:長野県北アルプス山麓 2015.6.20撮影

そんなこと言っているうちに、ほら、またヒメシジミのオスが近づいてきましたよ。

アサマシジミ♂に左下から近づくヒメシジミ♂:長野県北アルプス山麓 2015.6.20撮影

よっぽど気になるんですね。

今度はヒメシジミのオスはアサマシジミのオスの上に回り込みます。 ヒ

メシジミの翅の色がはっきり分からないかもしれませんが、上の写真のヒメシジミと、下の写真のアサマシジミの翅の色を見比べると、違いが分かるでしょ。

ヒメシジミ♂はアサマシジミ♂の上に回り込む:長野県北アルプス山麓 2015.6.20撮影

ヒメシジミの方が青が鮮やかで、その青は翅いっぱいに広がっています。

白い縁毛は、羽化したばかりは長くって、非常に綺麗なんですよ。

一方アサマシジミは、青の出方に地域変異もあるそうですが、ここの産地のは青が翅いっぱいに広がっていません。黒い部分が多いですよね。

でも、この青の色合いは現地で見ると、非常に美しくって、光っています。構造色なのかも知れません。

そうこうしているうちに、なんとかヒメシジミが離れてくれたようですね。

アサマシジミ、やっと落ち着いて吸蜜ができます。

アップにしますので、翅の模様をよーく見てくださいね。ヒメシジミ♂が離れ、ヒメシジミ♀と落ち着いて吸蜜するアサマシジミ♂:長野県北アルプス山麓 2015.6.20撮影

ヒメシジミ♂が離れ、ヒメシジミ♀と落ち着いて吸蜜するアサマシジミ♂:長野県北アルプス山麓 2015.6.20撮影

今度は翅を開いたところです。

左向きに翅を開くアサマシジミ:長野県北アルプス山麓 2015.6.20撮影

ちょっと渋く感じるかも知れませんが、この青の色合いはヒメシジミとはかなり違い、しかも光沢があるんです。

実際見てもらいたいな。

あっ、休んでいるところに、またヒメシジミが。

今度は後ろから。

アサマシジミ♂の後ろから近づくヒメシジミ♂:長野県北アルプス山麓 2015.6.20撮影

翅をよーく見れば分かりますが、このアサマシジミの翅には何かが付いているのか、傷が付いているのかちょっと気になりますね。

お節介のヒメシジミにもアサマシジミは動じません。

どうやらヒメシジミくん、後ろの葉っぱで様子を伺うことにしたみたいですね。

アサマシジミ♂の後ろから様子を伺うヒメシジミ♂:長野県北アルプス山麓 2015.6.20撮影

ヒメシジミのことは知らんぷりのアサマシジミ。

やれやれ、ついにヒメシジミも退散したみたいです。

ついに執拗なヒメシジミが離れ、V字に翅を開くアサマシジミ♂:長野県北アルプス山麓 2015.6.20撮影

最後に別の葉っぱに移動して、前を向いて翅でVサインをしたアサマシジミでした。かっこいいでしょ。

前向きV字のアサマシジミ♂:長野県北アルプス山麓 2015.6.20撮影

アサマシジミ

Plebejus subsolanus シジミチョウ科

環境省レッドデータブック(2017年)アサマシジミ本州亜種 絶滅危惧ⅠB類(EN)

環境省レッドデータブック(2017年)アサマシジミ本州高地亜種 Ⅱ類(VU)

↑ 変更

環境省レッドデータブック(2012年)アサマシジミ中部低地帯亜種 絶滅危惧ⅠB類(EN)

アサマシジミ中部高地帯亜種 絶滅危惧Ⅱ類(VU)

長野県レッドデータブック(2015年)アサマシジミ(中部低地帯亜種) 絶滅危惧II類(VU)

長野県レッドデータブック(2015年)アサマシジミ(中部高地帯亜種) (ヤリガタケシジミ)絶滅危惧II類(VU)

❇︎ アサマシジミ中部高地帯亜種 (ヤリガタケシジミ)は、長野県文化財保護条例の県指定天然記念物などで、採集が禁止されています。

長野県 希少野性動植物保護条例(長野県報告示第278号)(2016年4月25日)に指定されました。

http://www.pref.nagano.lg.jp/kokai/kensei/kenpo/h28/h2804/documents/kokuji20160425.pdf

https://www.pref.nagano.lg.jp/shizenhogo/kurashi/shizen/hogo/kisyoyasei/jorei/documents/h28musekiktui.pdf 平成28年4月25日告示 長野県ホームページより

❇︎ アサマシジミ中部低地帯亜種は、長野県 希少野性動植物保護条例(長野県報告示第278号)(2016年4月25日)に指定されました。

・長野県希少野性動植物保護条例(長野県報告示第278号)...2016年(平成28年)4月25日指定

http://www.pref.nagano.lg.jp/kokai/kensei/kenpo/h28/h2804/documents/kokuji20160425.pdf

https://www.pref.nagano.lg.jp/shizenhogo/kurashi/shizen/hogo/kisyoyasei/jorei/documents/h28musekiktui.pdf 平成28年4月25日告示 長野県ホームページより

ヒメシジミ

Plebejus argus micrargus シジミチョウ科

環境省レッドデータブック 本州・九州亜種 準絶滅危惧(NT)

長野県版レッドデータブック 留意(N)