春が待ち遠しいのは人間ばかりではない。厳冬を過ごしたすべての生き物たちにとって、暖かな陽気と、新鮮な餌をお腹いっぱい食べることのできる春を迎えることは、人間以上に嬉しいに違いない。そんな動物たちの中でも、出会いにとりわけ感動するのはカモシカだ。
カモシカは近視だと聞く。一定の距離さえ保っていれば、逃げ去る前にこちらを注視する。「見つめ合う」そんな瞬間が大好きで、毎年小谷村を訪れ、同じ所で会っている。
山里では雪解けの頃に、厳しい冬を越せないで死んでしまったカモシカの姿を見ることもある。そう言うカモシカを、村人はそっと土に埋めてあげるのだそうだ。
山の畑では、村人が植えた野菜の新芽をカモシカが食べてしまうため、苗の周りをビニールシートで覆う。そんなことはお構いなしに、食べ物の巡回をするカモシカたち。人間には「いたずらもの」と嫌われてしまうカモシカだが、「毎日山の見回りさ」と言って、去っていく姿は頼もしい。
カモシカの角 2007.10.15 茸採りで見つけた人から見せて頂く