【ギフチョウ・ヒメギフチョウどうなるの?:長野県北アルプス山麓】2010.4.13

【ギフチョウ・ヒメギフチョウどうなるの?1:はじめに:長野県北アルプス山麓】2010.4.13

2010/04/14 13:40 に ついついペコ が投稿 [ 2010/07/04 23:30 に更新しました ]

春の遅い北アルプス山麓でもいよいよ、「春の女神」とも言われるギフチョウ、ヒメギフチョウのシーズンを迎えました。白馬村の早いところではヒメギフチョウが舞い出し、13日には大町市でチョウを飼育しているYさんから「今朝、ヒメギフチョウが羽化したよ」と連絡が入りました。

まず、この4月1日から、採集、き損などに罰則が適用された白馬村のギフチョウ、ヒメギフチョウですが、悪質な採集者があとを絶たないなどの理由から、採集、き損などに罰則が適用されました。いつも新聞などで悪く言われ続けているチョウ採集者の皆さんのチョウに対する暖かい思いもお聞きしていますし、白馬村教育委員会からは罰則に至った経緯もお聞きしました。村民の皆さんのギフチョウ、ヒメギフチョウへの思いなども、徐々にですがお聞きしています。また、北アルプス山麓では、蝶を飼育し、放蝶もあちこちで行われています。この放蝶はホットニュース、あるいは美談として地元の新聞が掲載し、地元ケーブルテレビでも放映されています。しかし学会などで是非をめぐり議論がなされているようです。一般の皆さんは、学会で議論されている放蝶問題を知らないのが現状です。また善意で飼育して放蝶をしていますので、その範囲はひとつの市町村内だけではなく、北アルプス山麓に広がり、県外にも及んでいるようです。実態は不明ですが、放蝶についての意見も寄せられています。

そう言う問題が起きている中で、何も知らずに春の女神が舞い出しました。北アルプス山麓のギフチョウ、ヒメギフチョウ、またチョウを取り巻く環境はこれからどうなっていくのでしょうか。

数多くのチョウが棲息している北アルプス山麓ですので、白馬村を含めた北アルプス山麓のチョウを、環境などとともに考えていければと思っています。

白馬村にはチョウ及び食草の減少、増加などのデータはありません。どなたでも情報を提供してくだされば、細かい産地、氏名は伏せて掲載いたします。

まずは、白馬村教育委員会からお聞きした、罰則に至った経緯を取り上げたいと思います。

【ギフチョウ・ヒメギフチョウどうなるの?2:罰則規定に至った経緯:長野県北アルプス山麓】2010.4.13

白馬村は1974年(昭和49年)10月1日に、ヒメギフチョウ、ギフチョウを、ハッチョウトンボ、キイトトンボとともに、白馬村指定文化財の中の種指定の天然記念物として指定しました。

それから27年が経過しましたが、村内の2009年(平成21年度)のギフチョウ・ヒメギフチョウ保護監視員などの報告を重く見て、文化財であるギフチョウ、ヒメギフチョウの破壊、採集も問題行動だと、2010年(平成22年)3月19日の白馬村定例村議会にかけ、罰則の適用が可決されました。

既に4月1日から罰則規定の条例は適用され「指定文化財を損壊し、き損し、又は隠匿した者は、10万円以下の罰金又は科料に処する」ことに、なっています。

白馬村教育委員会によると、罰則に至った経緯は、白馬村指定の天然記念物であるギフチョウ、ヒメギフチョウの採集の多発、食草の盗み、チョウの採集者が民家の庭に侵入などがあり、事例として村教育委員会、中信森林管理署、保護監視員などによる合同パトロールで採集者と対面したことなどが挙げられました。

条例に罰則が付け加えられた主な理由 白馬村教育委員会によると・・・


▼ ギフチョウ、ヒメギフチョウの採集の多発

春のゴールデンウィークごろになると、北アルプス山麓では、スプリングエフェメラルと言われる、春のほんのわずかな期間しか咲かないカタクリやキクザキイチゲなどの花が一斉に咲き出し、越冬チョウに混じり、その時期だけしか舞わないギフチョウやヒメギフチョウが、花のまわりで吸蜜します。その時期には、カメラを持った大勢の観光客も、ネットを持ったチョウの採集者も北アルプス山麓を訪れ、あちこちで待ちわびた春を満喫します。

そんな中、白馬村内のあちこちでは、人気のあるギフチョウ、ヒメギフチョウの採集はあとを絶たないと言います。条例を知らないチョウの採集者や、条例を知っていてギフチョウ、ヒメギフチョウを採集する人も毎年訪れ、中には、大変マナーの悪い採集者がおり、昨年度は、40人の保護監視員が、パトロールをしました。その監視員など20から30人が教育委員会に報告を寄せ、報告した中には小学生もいました。その報告があって、条例に罰則が付け加えられました。

▼ 食草の盗み

県の事業の砂防工事をしている付近に、ヒメギフチョウの食草のウスバサイシンがあり、関係者が経過を観察していました。約450センチ×200センチのエリアを50センチ×50センチのブロックに分けていました。約6ブロックに相当する葉が、何者かにより総なめにされていたとのことです。「明らかに人」だと判断でき、「不自然にウスバサイシンが見られない状態になっていた」と言います。区画NO.3というブロックで、「卵あるいは幼虫が、何者かにより盗まれた可能性がある」と言うものです

ウスバサイシンを掘って持って行ったのか、葉だけを摘んでいったのかの詳細は、教育委員会でも不明です。

▼ チョウの採集者が民家の庭に侵入

春のゴールデンウィークには、その時期だけを白馬村の別荘地で過ごすことを楽しみにしている人もいます。憩いを求めて別荘地に来ますが、その地はヒメギフチョウの産地になっており、多くの採集者、カメラマンも同じ時期にその地を訪れます。

産地の近くに家のある人もいます。毎日の生活空間にチョウが舞い、チョウの時期には、ネットも持って採集者が、チョウを追いかけて庭に平然と侵入するそうです。

白馬村役場のIさんは長野県外のチョウ愛好家の人からの電話を受けました。電話での内容は「高圧的な態度で注意するのが気に入らない」、文化財だと知っていて「採るのがなぜ悪い」と言うもの。「問題視しているのは、文化財だと知っていて『採るのがなぜ悪い』と言っている、そういう人。白馬村の場合は(ギフチョウも、ヒメギフチョウも)天然記念物」「住んでいる人の気持もわかってほしい。家から出れなくて不安になる人もいる。住民がおびえている」と言います。

「心ないチョウやさんが、人に迷惑をかけることから、反響が出て来た。チョウやさんすべてに言っている訳ではない」と、教育委員会のOさんは話していました。


▼ 昨年の一事例:保護監視員などによる合同パトロールで採集者と対面

昨年5月8日に行われた合同パトロールでは、2人ずつの3組の採集者と対面しました。そのうちの1組は条例を知らずに親子で採集を楽しんでいましたが、指導したら聞いてくれたとのことです。しかし、他の2組の採集者は、明らかにネットを持っていたが、近づくと「何もしていない」と言い、「見せてください」と言うと、「大事なものだ」と言うだけで「見せてはくれなかった」と話しました。

教育委員会のOさんは、白馬村内外に放蝶が行われていることも聞いており「白馬村の内も外も、30年も守られていなかった。やめてほしいのはモラルの無い捕獲。そういうことから声があがって来たのも現状なので。(チョウの数や、食草の分布などの)調査はしていないが、春にはデータを取る。皆が円満にギフチョウ、ヒメギフチョウを見ることができるのが理想」と話していました。