厳冬の北アルプスの東側では、夜明けに、ピンク色に包まれた山々の姿を見ることができる。幻想的な世界に吸い込まれ、ほんの10分間、時が止まるかのような静寂に包まれる。氷点下10℃の夜明けだ。
「前の日が冷え込んだ日ほどきれい」。大町市美麻で、何人かから同じ言葉を聞いた。
周りを山に囲まれた新行地区で、星の瞬きが消えるころ、空とも山とも区別がつかない暗い空間に、うっすらと山のシルエットが見えてくる。ちょっと小高い丘に登り、雪の上にカメラを据え、朝焼けを待つ。
まだ太陽は顔を出さないが、東の空がオレンジ色に変わり出すのが、美麻の夜明けの合図。それからほぼ20分後の7時数分前、西にそびえる北アルプスの白い頂がピンク色に光り出す。雪をかぶった爺ヶ岳と鹿島槍ヶ岳は、周りの雪の青さの中にくっきりと浮かび上がり、この時ばかりとほこらしげに輝く。
張りつめた空気に包まれながら短い時は流れ、ふと気が付くと、現実の世界に引き戻される。いつも見慣れている白い山が、目の前に鎮座している。ピンクの山はどこにもない。
「放射冷却で冷え込んだ日ほどピンクが美しい。あまりにきれいで、主人を起こすこともある」美麻新行で「パン工房森のふくろう」を経営する女性はそう語った。
テニスコートの上に、 グランドがあります。そこから撮影しました。
「【雪化粧の北アルプス:長野県北アルプス山麓大町市美麻から】2010.12.5」と撮影場所はほぼ同じで、モルゲンロートのピンクの朝焼けは、ほんの一瞬だけです。ぜひ挑戦してみてください。