長野県北アルプス山麓でずっと探していたクロシジミですが、アサギマダラの仲間たちのおかげで、やっと先日クロシジミと出会い、撮影することができました。個体は思っていた以上に大きく、ベニシジミより大きな翅を持っています。また思っていた以上に黒く、撮影には難渋しました。
クロシジミはクロオオアリとの共生という非常に珍しい生き方をしている上に、限られた場所にしか生息していないとのことで、小谷村は2017年4月18日、村の天然記念物に指定しました。村では現在、住民とともに、貴重なクロシジミの保全活動に取り組んでいます。
取り組みの一つに野焼きがあるそうです。
野焼きは害虫駆除の一環で毎年春に行われるものですが、クロシジミは幼虫の段階でアリによって土の中のアリの巣に運ばれていきますので、クロシジミ自体には被害がないそうです。
村の貴重なチョウを村民の皆さんにもっと知っていただきたいという願いから、村は学習会、観察会も開いています。
学習会、観察会当日には雨になってしまいましたが、お二人のアサギマダラの仲間に産地を案内していただきました。実際にはクロシジミの撮影まではできませんでしたが、後日予定を調整して、産地に出向くことができました。
産地では野焼きの跡がしっかり分かるほど黒い炭が地面に落ちており、スニーカーの生地の隙間からその炭が靴の中に入り、家に帰ったら靴下のつま先付近が真っ黒になっていてビックリするほどでした。まだ新しいスニーカーを、その日のうちに早速洗いました。
ところで肝心なクロシジミなんですが、産地に行った日にたまたま産卵に立ち会うことができました。
メスのクロシジミがつかまっているのはクズの葉柄です。
クロシジミのお腹のあたりに産卵されたばかりの卵が二つあるのが分かりますか?
産んだばかりの卵を踏みつけやしないかと見ていてヒヤヒヤでした。
ピントが甘いのですが、これが産まれたばかりのクロシジミの卵です。
真ん中が凹んでいます。
クロシジミが産卵に選んだのは、毛むくじゃらの葉柄でした。トゲに刺さらないといいなあと、後になって思うのですが、きっとうまくトゲを避けて産卵しているのでしょうね。
さてその他に、花に止まって吸蜜したり、葉っぱで休んだり。同じ花でいつまでも吸蜜している個体もあり、あまり移動しないのが不思議なくらいでした。
ちょこんとアリさんも来ています。やがて幼虫たちがアリさんのお世話になるのでしょうね。
この子は葉っぱの縁に止まり、何を考えているのでしょうね?
このピンクと白のチダケサシの花がお気に入りのようで、吸蜜個体を何頭も同時に観察できました。
こうして撮影していて苦労したのは、クロシジミの翅の黒さと、さらにその翅の中の斑紋をいかに分かるように表現するかでした。
花のピンクの色も、鮮やかな葉っぱの緑も生かしたいと思うと、花の上で動き回るクロシジミ に合わせて、どうしてもシャッタースピードを調整するしかなく、翅に日が当たっている時と当たっていない時を微妙に調整しながらの撮影は非常に大変でした。
下の画像は開翅を狙って何度も同じようなポーズを撮影した中の数枚です。
クロシジミって表の翅が本当に黒いんです。でもその黒の中に模様があったり、角度によって微妙に色が変わったりで、撮影しながら楽しんでいました。
表の翅はこのように黒いのですが、ミシン目みたいな白い縁毛が魅力的ですね。
あらあら、葉っぱの先端に止まって後ろ向きですか!
テリトリーを張るゼフィルスやオオムラサキとは違うんですね。
こちらの個体は葉っぱの先の方を見つめています。テリトリーを張り出したのでしょうか。
個人的に今回のお気に入りの一枚。
色々な場面を撮影したかったのですが、またいつか撮影に挑戦したいと思いながら、産地を後にした私でした。