【ちょっと心配なホオジロガモ:長野県北アルプス山麓】2021.1.19

北アルプス山麓では、たまにしか出会えないカモの中で、年に一回くらいは撮影できるホオジロガモがいます。そんなホオジロガモがまた今年も北アルプス山麓の湖に来ていますが、ちょっと心配ごとがあります。

先日の14日のことです。「今年もまた出会えた」と喜び、車をできるだけ道の左端に近づけ、なんの変哲もないホオジロカモのいる光景に、500mmのレンズを取り付けたカメラを向け、ごくごく普通にシャッターを切っていました。

近くにはキンクロハジロもいて、ホオジロガモのオスは水に潜ったり、出てきては羽繕いをしたりを繰り返していました。周囲にメスの姿は確認できません。

光線の加減でしょうが、頭の羽は紫色に見えます。「できるだけ綺麗な色で撮りたい」そんな思いで、シャッターを切っていました。

水に潜っている時にはシャッターを切れませんので、出てきた時にだけタイミングを狙います。あっちを向いたり、こっちを向いたり。忙しく動きますので、頭のステキなカラーを狙いながら、シャッターを押し続けます。

そんな時です。おや?!何だろう、藻かな〜?

ホオジロガモの後ろに浮かぶ黄色いものに気軽いたのは、そんな中でのことでした。最初は気にも留めず、いつの間にか消えてしまうので、浮いたり沈んだりしているのだろうと思っていました。

他にも珍しいカモが来ていないかな、どちらかと言うとそんな思いが強く、数分間ホオジロガモを観察しながら撮影し、その後は湖を左回りにゆっくりと一周しました。

地元に通年いるオオバン、カワウのほかに、カルガモ、カワアイサ、カンムリカイツブリ、カイツブリ、ホシハジロ、ヨシガモもいます。「今年はカモが少ないな〜」そう感じました。キンクロハジロは数羽程度の群れを確認できますが、他は大きな群れをほとんど確認できません。

仕方なく別の湖に行ってはみたものの、オオバンとカルガモを数羽程度しか確認できませんでした。

再度戻り、最初の湖をまた一周します。最初見たところにはもうホオジロガモはいませんでしたが、西側で1羽確認できました。最初確認した場所とはそれほど離れていないのできっと同じ個体でしょう。

光線の加減でしょうか、今度は紫色の頭が緑色に見えました。

さらに湖の水の出口付近にいたのはホシハジロ数羽です。そのホシハジロを追い払うかのようにちょっかいを出していたミコアイサも1羽だけ確認できました。

心が引かれていたので、翌日の15日も撮影に行きました。

やはり同じ場所でホオジロガモのオスの一羽を確認できました。今度は気になっていた黄色い藻の正体や「餌を確認できないだろうか」との思いでちょっと期待を込めてカメラを向けます。

前日の14日よりも頻繁に水に潜っています。出て来てはすぐにまた潜るを繰り返しています。徐々に場所を北に移動させているので、頭の羽のカラーも撮影したい思いもあり逆光にならないように車を動かしながら追いかけます。

おやっ!また黄色い藻のようなものが見えます。もう撮影し続けるしかありません。

ほぼ連写です。

向きを変えるのも早いですけど、今度は羽を開いてくれました。なかなかカッコいいですね。

何が嬉しくて羽を広げているのでしょう?

黄色い藻が完全に消えないうちに、ホオジロガモはすぐに水に潜ってしまいました。ほんの数秒後です。

それにしても、あの黄色い藻のようなものの正体は何なんでしょう?

そうこうするうちに、水に潜ったホオジロガモは口に何かを加えて水から上がって来ました。ちょっとオレンジ色ぽく見えますね。3コマ撮影していますが、魚かどうかは分かりませんでした。

その数秒後、また水に潜ってしまいました。

撮影しながら様子を見ると、黄色い藻のようなものは、ホオジロガモの後ろにだけ出現しているのに気づきます。徐々に多くなり、やがて見えなくなっていきます。

ホオジロガモの排泄物ではないだろうか?単純にそう考えました。オシッコなのか、糞なのか?オシッコにしてはあんなに黄色い色が数秒間も見え続けるのだろうか?これは藻ではないと思えました。

宿題は家に持ち帰りました。

15日に撮影した画像をチェックすると、以下のことが見えてきました。

  • 撮影時間:27分。

  • 潜った回数:32回。

  • 糞のようなものの確認回数:11回。

  • 水上での食事回数:1回

水から出て、水に潜る前に糞をし、また水に潜る。それを繰り返しているように見えました。ただ、確証は得られませんでしたので、インターネットで調べました。

そうしたら、カモは通常、陸で糞をすることが分かりました。糞の大きさはカモの種類にもよるのでしょうが、指の太さ程度で、固形だと言うことも分かりました。

鳥には下痢便もあるとのこと。重症化すると血便になり命を落とすこともあるようです。これで、黄色い藻の正体が判明しました。恐らくですが、下痢便だったのでしょう。病名などは当然分かりませんが、何かの原因があったのでしょうね。


ところで近頃、鳥インフルエンザが流行っており、あちこちで鶏などが罹患しているようです。感染の経路となっているのが野鳥のようです。

観察したホオジロガモが咳をしたり、弱っているような様子は確認できませんでしたが、もし病気に感染していたらと心配になり、とりあえず県に電話して状況だけをお知らせしました。

一応農林水産省の「鳥インフルエンザ」のサイトのURLを貼り付けておきます。

https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/

早く回復し、元気な状態でこの冬を乗り切って、暖かい春になったら仲間とともに北帰行をして欲しいですね。

ホオジロガモ Bucephala clangula clangula

鳥類カモ科

長野県版レッドリスト(2015)で、絶滅危惧II類(VU) に指定されています。