イブキジャコウソウ:長野県北アルプス山麓松川村2015.9.5
薄紫のイブキジャコウソウがまだ、長野県北アルプス山麓の高瀬川の河原で咲いています。夏を通り越し、ほとんど花は散ったのですが、ほんの数本咲いている花を見つけました。
とりあえず、最新の画像ですが、こんな花です。
イブキジャコウソウは、高山にも咲く半落葉小低木の花のようですが、私にとっては「河原の花」。
長男がまだ3歳の時に北アルプス山麓の松川村に引っ越してきて、河原によく連れて行って遊んでいた頃から普通にあった花です。小さく、しかもあまりぱっとした色ではないこともあり、その頃はイブキジャコウソウに気を止めていませんでした。
ところが数年前、大町市観光課から観光リポーターの鹿田さんが撮影したイブキジャコウソウの写真と記事(このサイトですが、新しいウィンドウで開きます)を送っていただき、ハッとしました。
なぜって、近くの河原に普通に生えている草なのに、なぜ山裾の国営アルプスあづみの公園大町・松川地区や大町市の鷹狩山に咲いているのか、非常に疑問でした。
しかも、鹿田さんの記事によれば「山地から高山の礫地や崩壊地で良く見かけ、山麓の登山道沿いで出合ったりするシソ科の多年草」とあります。高山植物とも言える植物が標高600メートル程度の河原にも咲くの?
私の知っている薄紫の小さな花は、画像では似ていても別の種類の花なのではないかと、その時から図鑑などを調べたのです。
ところが、似たような画像の花は野草の図鑑に載っていても、この花はなかったのです。今だから分かるのは、この植物は野草ではなく、樹木だったのです。
と言うことで「イブキジャコウソウをもっと調べてみたい」と、実際に河原に出向きこんな写真を撮ってきました。咲き始めの6月10日です。
イブキジャコウソウ:長野県北アルプス山麓松川村 2015.6.10
川の河原のあちこちで咲いていたイブキジャコウソウです。色も、薄かったり濃かったりで何の違いなのでしょうね?
イブキジャコウソウ:長野県北アルプス山麓松川村 2015.6.10
14日にも行ってみました。 帰化植物のツルマンネングサと一緒に咲いていました。 薄いピンクと黄色の組み合わせって、素敵ですよね。河原だなんて思えませんね。
イブキジャコウソウ:長野県北アルプス山麓松川村 2015.6.14
ちょっと濃いピンクの花もありました。
濃いピンクと薄いピンクのイブキジャコウソウ:長野県北アルプス山麓松川村 2015.6.14
横から見てみました。
濃いピンクのイブキジャコウソウ:長野県北アルプス山麓松川村 2015.6.14
踊っているみたいですね。
薄いピンクのイブキジャコウソウ:長野県北アルプス山麓松川村 2015.6.14
ツルマンネングサと一緒に咲いているのは白い花でした。
ツルマンネングサの花も小さいのですが、イブキジャコウソウはもっと小さいのが分かりますね。
ツルマンネングサと白いイブキジャコウソウ:長野県北アルプス山麓松川村 2015.6.14
ヒョウタンボクの実は見事に赤くなって、その間からイブキジャコウソウが顔をのぞかせていました。
赤いヒョウタンボクの実とイブキジャコウソウ:長野県北アルプス山麓松川村 2015.6.14
真横から見るとこんな姿です。
真横から見たイブキジャコウソウ:長野県北アルプス山麓松川村 2015.6.14
真っ白な花。シロバナイブキジャコウソウと言うようです。学名も付いていました。質素でいいですね。
シロバナイブキジャコウソウ:長野県北アルプス山麓松川村 2015.6.14
まだ雌しべが伸びていない花です。
咲いたばかりのイブキジャコウソウ:長野県北アルプス山麓松川村 2015.6.14
花が散った後に見られました。萼が赤いですね。
イブキジャコウソウの赤いガク:長野県北アルプス山麓松川村 2015.6.14
茎も赤っぽいですね。
イブキジャコウソウの赤っぽい茎:長野県北アルプス山麓松川村 2015.6.14
おやおや、葉っぱには毛が生えていますよ。おひげみたい。
イブキジャコウソウの葉に生えるヒゲ:長野県北アルプス山麓松川村 2015.6.14
どうやら、葉の縁に毛が生えているみたいですね。葉の表には生えていません。
イブキジャコウソウの葉の縁に生える毛:長野県北アルプス山麓松川村 2015.6.14
葉の裏にも毛は生えていません。でも、茎には細か毛がびっしり。高山ではこの毛が、空気中に漂っている水分を蓄えるのかしらね?
イブキジャコウソウの葉の縁と茎に生える毛:長野県北アルプス山麓松川村 2015.6.14
葉っぱを上から見てみました。
二つずつ分かれているのがよく分かりますね。
二つずつ別れるイブキジャコウソウの葉:長野県北アルプス山麓松川村 2015.6.14
7月17日、暑い夏です。
あんなに満開だった花はまばらになっています。
イブキジャコウソウ:長野県北アルプス山麓松川村 2015.7.17
株は成長し、横にしっかり枝のように茎を伸ばしましたね。でも高さは10センチ程度で、それほど大きくなりません。
花もまだまだ咲いています。
イブキジャコウソウ:長野県北アルプス山麓松川村 2015.7.17
この後、しばらく河原に行かなかったのですが、秋ともなれば花は見られないだろうと思って行った9月5日に、ほんの数本の花を見たのです。それが一番上の花です。ちょっと嬉しかったですね。
山岳にも咲き、河原にも咲くというイブキジャコウソウでしたが、数年前に安曇野市の高瀬川で、調査の看板を見ています。まだまだ分からないことが多いですね。
新しい何かを発見できたら嬉しいですね。
山麓にお越しの際は、ぜひ河原にも立ち寄ってみてください。こんな素敵な花たちが優しく迎えてくれますよ。
イブキジャコウソウ Thymus quinquecostatus Celak. var. ibukiensis (Kudô) H.Hara (シソ科 イブキジャコウソウ属)の半落葉小低木
シロバナイブキジャコウソウ Thymus quinquecostatus Celak. var. ibukiensis (Kudô) H.Hara f. albiflorus H.Hara (シソ科)
自然公園法で指定されています。国立公園、国定公園、長野県立自然公園などで規制されていますのでご注意ください。
国立公園などでは特別保護区はもちろんのこと、その入り口付近の特別地域では、許可のない採取が禁止されています。特別地域は国立公園などの看板などがある道路沿いから規制が始まります。普通地域とのエリアの境は決して明確ではありません。
学名は、米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList),http://ylist.info( 2023年2月17日)引用
《参照記事》(このサイト内)
《参考文献》
山渓カラー名藍 日本の樹木 山と渓谷社刊 P657
植物分類表 大場秀章編著 (株)アボック社刊