ヒメギフチョウ 長野県北アルプス山麓小谷村 2014.5.27撮影
暖かな春の訪れとともに長野県北アルプス山麓で舞い出すチョウがいます。チョウ愛好家の皆さんが、優雅に舞う姿をカメラに収めようと待ち望んでいるギフチョウとヒメギフチョウに関連して、小谷村の情報をお知らせいたします。
長野県北アルプス山麓小谷村は2015年11月2日に、村内に生息するギフチョウとヒメギフチョウを村の天然記念物に指定し、採取禁止と致しました。村文化財保護条例では、許可なく採取した違反者には罰則が適用されることになりました。
以前も「ヒメギフチョウ採集禁止」の看板が出ていましたので、ご存知の方も多いかもしれません。
小谷村教育委員会によりますと、村北部の生息地域は、ギフチョウとヒメギフチョウが混生する大変貴重な場所となっているとのことです。しかし近年、里山の放棄、開発などにより、個体数が著しく低下しているそうです。
通常のギフチョウの幼虫は、ミヤコアオイなど常緑のカンアオイを食草としていますが、村内の一部地域ではヒメギフチョウの食草のウスバサイシンしかなく、それをギフチョウが食草としているそうです。
ギフチョウ線とも言われる2種の分布境界線はルードルフィアラインと言いますが、小谷村北部のギフチョウ、ヒメギフチョウの混生地では、自然状態での交雑が報告されているとのことです。
そのようなわけで小谷村は、ギフチョウとヒメギフチョウを村のかけがえのない財産として保護し、次の世代に残していこうと、村の天然記念物に指定しました。
天然記念物指定と同時に、村文化財保護条例が改正され、卵魂、幼虫、成虫ともに、無許可での採取には罰則が適用され、違反すると10万円以下の罰金、または科料が課されるそうです。
2月、地域住民は学習会を開き、ギフチョウとヒメギフチョウについて、しっかり学びました。
今後は新たな看板を設置したり、巡回などを予定しています。
詳しくは小谷村のホームページをご覧ください。
ところで、上の画像はヒメギフチョウです。食草はウスバサイシンしかない場所ですので、勝手にずっとそう思っていました。しかし、今回の情報で画像のチョウが純粋なヒメギフチョウなのか、それとも若干でも交雑が混じっている個体なのかが分からなくなりました。
右上の白い斑紋の先端は内側にわずかに曲がっています。しかし、後翅外縁の内側の色彩はギフチョウのオレンジではなく、ヒメギフチョウ特有の薄黄色です。
実は、個人的に小谷村ではウスバサイシンしか見たことがなく、カンアオイは発見していません。
今まで撮りためたデータを見ても、小谷村で撮った写真の中に、ギフチョウの写真はありませんでした。
チョウの前翅先端の白い(薄黄色の)斑紋が、ギフチョウとまではいきませんが、若干内側に曲がった個体は、白馬村など北アルプス山麓の数カ所で撮影しています。斑紋がわずかに曲がる程度のことは、ヒメギフチョウには普通にあるのかもしれませんね。
ギフチョウ
Luehdorfia japonica アゲハチョウ科 ウスバアゲハ亜科 ギフチョウ族 ギフチョウ属
環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧Ⅱ類(VU)
長野県のレッドデータブックでは準絶滅危惧(NT)
ヒメギフチョウ
Luehdorfia puziloi inexpecta Sheljuzhko アゲハチョウ科 ウスバアゲハ亜科 ギフチョウ族 ギフチョウ属
環境省のレッドデータブックでは準絶滅危惧(NT)
長野県のレッドデータブックでは準絶滅危惧(NT)
「生息地が少なく、種の存続への圧迫が強まっていることによります」と、あります。