【ヒメギフチョウの卵・長野県北アルプス山麓】2020.5.21

ギフチョウの卵をご紹介してから、10年も経ってしまいました。その間何をやっていたかと言えば、年に1回ギフチョウ、ヒメギフチョウの産地巡りをしますが、近年は別のチョウを追いかけていました。

でも、年に一回しか行くことがないウスバサイシンがあるところで、たまたまヒメギフチョウの卵を発見しました。今までずっと成虫も卵も観察したことがなかった場所です。ですので、新たな発見に大喜びでした。

画像は悪いですが、今年5月9日に14卵ありました。ウスバサイシンを毎年見ていましたが、成虫を確認したことは一度もなく、葉の裏を見て、卵があるのに本当にびっくりしました。確認できたのはたったこれだけですが、まだきっとどこかにウスバサイシンがあって、ヒメギフチョウが命を繋いでいるのでしょうね。

さらに上の画像の近くの産地で毎年行くところですが、黒くなって孵化を待っているような黒い卵がありました。16卵中12卵が黒いです。きっと今頃は幼虫でしょうね。


左と同じ産地ですが、黄緑色の卵です。14卵。


これも同じ産地での黄緑色の卵。8卵。


同じ産地のほぼ同じ場所です。14卵。


近年はあまりギフチョウやヒメギフチョウの撮影には力を入れていません。特に、この二つの産地は毎年一回は行くのですが、家から遠いためにシーズン中に何回も通い切れないからです。

一番上の産地は一人で行くにははちょっと怖いです。入り口は明るいのですが、木が大きくなりすぎて、暗くなってしまったからです。そういう場所でも食草のウスバサイシンは細々と成長し、毎年ヒメギフチョウを迎えていたのですね。成虫を何年間も確認していなかっただけに新たな発見は嬉しかったです。

下の4つの卵はそこから1キロも離れていませんが、毎年行っていた産地です。そこは周囲の木を切られたり、手入れがあまり行き届かなくなっているために、細々とヒメギフチョウたちが息をつないでいる産地です。

ただ、別のチョウの撮影もあって下の4つの画像の産地に接する我が家の土地に、年数回足を運んでいます。ここへ行くにも暗く感じますが、ある程度慣れたので一人でも行けるだけのことです。

北アルプス山麓の山林はこの近年、手入れをしてくれる人がかなり減っているように感じています。かつては木を切って薪を燃料に食事を作っていた時代が長く続いていたと思うのですが、プロパンガスや電気などの便利なものが出て来てからは、薪を生活に使うということがあまりなくなりました。

人の生活はスイッチ一つで非常に便利になりましたが、人の手入れが行き届いたような山林に住んでいた生き物にとっては、命をつなぐことが非常に大変になってきているのだろうなと感じています。

山道を車で走ることはよくあることなのですが、場所によってはどんどん暗くなっています。クマなど野生動物が住むには暗いところの方が良いのかもしれません。

でも人間にとって木が覆いかぶさったような暗い山道は気持ち悪いですし、何が出てくるか分からないので怖いです。

小さな花は成長した大きな木に日光が遮られ、花を咲かせられなくなっています。絶えてしまった花もあると思います。そういう所はあちこちに見られます。人間が便利な生活を望んだツケが、ヒメギフチョウたちにも回ってきているのかも知れません。

自分の家の土地でさえ手入れができないのに、保全だ保護だと叫びたい訳ではありません。よそ様の土地ならなおさらです。でもそんな所に、ヒメギフチョウが細々と生きているのが可哀想に思います。せめて行ける間は行って、食草の上に覆いかぶさった枯れ枝の一つでも取り除いてあげられたらと、産地ではほんのちょっとだけ心を配っています。

そんなところで来年もまたヒメギフチョウが舞いますように。