【フサヒゲルリカミキリ捕獲禁止に:長野県】2010.5.21

フサヒゲルリカミキリ 吉岡政幸さん提供

コウチュウ目カミキリムシ科のフサヒゲルリカミキリは4月30日から、長野県希少野生動植物保護条例に基づく特別指定希少野生動植物となり、捕獲禁止となりました。県は、増えつつあるニホンジカによる食草のユウスゲの食害によるものとし、捕獲禁止にすることで、生息数の減少を食い止めると言うものです。

フサヒゲルリカミキリは、ミヤマシロチョウや、タカネヒカゲ(八ヶ岳亜種)と並ぶ種指定の特別指定で、特別指定希少野生動植物は全部で19種となり、そのうち無脊椎動物の昆虫の指定は11種です。

長野県希少野生動植物保護条例によると、捕獲の許可は学術研究又は繁殖目的などに対してで、違法な捕獲には1年以下の懲役又は50万円以下の罰金があります。

フサヒゲルリカミキリは、長野県内で「ほとんど見られなくなり、緊急な保護が必要」とされ、長野県版レッドデータブック(2004年)では絶滅危惧Ⅰ種となっています。体長15から17ミリで、体は黒色から紫藍色。金属光沢が美しく、幼虫はユウスゲを食べ、成虫は6月下旬から7月下旬に出現します。

長野県版レッドデータブック(2004年)によると、1989年以前は長野県内では信濃町、旧戸隠村(現長野市)、長野市、旧坂北村(現筑北村)、茅野市、旧開田村(現木曽町)、旧木曽福島町(現木曽町)、旧日義村(現木曽町)、下諏訪町、諏訪市に、1990年以降は下諏訪町、諏訪市で分布の記録があります。現在は木曽町と諏訪市に記録があるそうです。

諏訪市の現地に詳しいYさんによると、牧場からの流入する雨水など水脈が代わり、湿地が乾燥化して、環境の変化が生じたようです。乾燥化し高茎植物のススキなどが湿地であった場所に入り込み、フサヒゲルリカミキリの飛翔空間が減りました。人為的にススキなどの草刈を行ったため「鹿牧場」を作る結果となり、シカが入って来たという訳です。

Yさんは「いつ居なくなっても仕方ない状況でした。ユウスゲやニッコウキスゲは人が食べても美味いので鹿にとってはご馳走だろうな」と話しています。


長野県希少野生動植物保護条例

http://www.env.go.jp/policy/chie-no-wa/ordi/text/15200000114.htm

ユウスゲ:大町市 2010.8.1