【ヒメギフチョウ来年も舞ってほしいな:長野県北アルプス山麓】2015.5.24

ウスバサイシンの葉っぱに産卵するヒメギフチョウ:長野県北アルプス山麓 2015年4月27日撮影

もう時期としてはとっくに過ぎましたが、4月末、長野県北アルプス山麓で、数頭のヒメギフチョウに出会いました。

そのうちの1頭が、人を恐れることなく近くのウスバサイシンの葉っぱに舞い降り、産卵を始めたのです。カメラのシャッターを切りながら近づきました。

ヒメギフチョウの羽化したばかりの個体は毎年のように見ていますが、ほとんどは飼育個体です。

自然界での産卵に立ち会うのはもっと数少ない個体です。

ウスバサイシンの新芽に産み付けられた薄緑色の卵同士はまだ固まっていますが、ウスバサイシンの葉っぱの成長に合わせて、徐々に卵同士が離れていきます。

やがて卵が変色したころに、黒い毛虫となり、毛虫たちはウスバサイシンの葉っぱをもりもり食べて、蛹になり、石の下などで長い眠りにつきます。

蛹の状態で昨年の夏からこの春まで、じっと石の下の土の中などで眠っていて、カタクリやキクザキイチゲの花が一面に咲く、ぽかぽか陽気の春になって、新たな命として初めて地表に出てくるのです。チョウのスプリング・エフェメラルの誕生です。

このチョウも、そんな一連の長い時を経てチョウとして誕生し、羽化後間も無く素敵なオスと出会い、結ばれて産卵にこぎつけたと言うわけです。

羽化のシーンを自然界で見たことはありませんが、毛虫から蛹へ、そして蛹からこんなに素敵なチョウへと変態するのは、非常に感動的ですよね。

春の訪れと同時に咲き出すスプリング・エフェメラルの花たちも、長い冬眠から覚めるように一斉に山裾で咲く姿を毎年、見せてくれます。

そんなスプリング・エフェメラルの花やチョウに引きつけられ、ついつい山裾に通ってしまう人が多いですね。

産み付けられた卵が成長し、暑い夏を土の中で過ごし、やがて迎える厳しい冬を乗り切れば、新たな命として生まれてきます。そんなチョウたちが来年もまた山裾でたくさん舞ってほしいですし、私たちも出会いたいですね。

ヒメギフチョウ本州亜種 Luehdorfia puziloi inexpecta Sheljuzhko

アゲハチョウ科 ウスバアゲハ亜科 ギフチョウ族 ギフチョウ属

環境省のレッドデータブックでは準絶滅危惧(NT)

長野県のレッドデータブックでも準絶滅危惧(NT)

生息地が少なく、種の存続への圧迫が強まっていることによります。

小谷村、白馬村、朝日村、木祖村などでは天然記念物に指定して、採集禁止にしています。

小谷村は2015(平成27)年11月2日、ギフチョウ、ヒメギフチョウともに、村の天然記念物に指定し、卵塊、幼虫、成虫などの採取禁止となりました。罰則が適用されました。10万円以下の罰金又は科料となっています。