場所は長野県北アルプス山麓の、あるアサマシジミの産地です。
アサマシジミを撮影に行くと、ヒメシジミの集団の中で、かろうじて数頭のアサマシジミに出会います。これはまたの機会にアップします。
アサマシジミの方が体が大きいためか、数が少ないためなのか、アサマシジミはいつも穏やかにしているのですが、数が多いヒメシジミの中には、凄まじいオスもおり、たまにドラマのような光景を見せてもらっています。
上の写真も、何気ない風景の一コマですが、エビラフジで吸蜜しているヒメシジミのオスにオスが近づき、そのオスをまた別のオスが追いかけています。蜜を求めるこんな光景はごく普通のことですが、実はこんな凄まじいオスもいます。
手前で下を向いて吸蜜しているメスのヒメシジミと、その奥で穏やかに吸蜜していたヒメシジミのオスとメス。右がオスです。
そこへ1頭のヒメシジミのオスが舞ってくると、いきなり吸蜜していたオスのヒメシジミの体にアタック。翅に馬乗りになっちゃいました。
「痛いじゃないか、いきなり何するんだよ」
吸蜜していたオスは、難なく攻撃者を振り払いました。
ところが、
「俺にも蜜を吸わせろ」
とばかりに、舞ってきたオスは、体が小さめのメスのヒメシジミの体にアタック。翅を大きく広げて、翅の上に馬乗りです。
「きゃー、助けて〜」
メスのヒメシジミの悲鳴を聞いて、後ろ向きで吸蜜していたちょっと体が大きめのヒメシジミのメスが反撃に出ようとすると、襲って来たヒメシジミは葉っぱの陰に隠れ、身を潜めてしまいます。
可哀想に、攻撃されたヒメシジミのメスは後ろを向いて泣いてしまいました。
「大丈夫だったかい?」
吸蜜していたオスは自分も攻撃された体で、メスを慰めています。優しいのね。
様子を伺っていた攻撃者のオスのヒメシジミは、ついにメスを慰めていたオスに戦いを挑み、オスは闘いに挑みます。
泣いていたメスはびっくりして翅を広げ、その場に緊張が走ります。
しばしオス同士のバトルが繰り広げられました。
攻撃者が下から攻め込むと、上のメスよりもひと回り大きな体のヒメシジミのメスは、体を張って攻撃させまいとガードします。もう吸蜜どころではありません。
それでも攻撃者はしつこく攻撃を繰り返したために、ついに2頭のメスのヒメシジミはその場から逃げ去ってしまいました。
別の花に行けばいいだけのことですから・・・
メスたちを守ろうとオスのヒメシジミも必死に抵抗しましたが、ついにメスたちに逃げられてしまったあとですから、どうしようもありません。
攻撃してきたオスのヒメシジミは吸蜜するわけでもなく、メスを追いかけるわけでもなく、いつの何か花から離れて行ってしまいました。
攻撃されたオスは、楽しい食事タイムをめちゃくちゃにされた上にメスたちにも逃げられ、あっけにとられてしまいます。
「なんだか、寂しいなあ」
美味しいはずのエビラフジの蜜を吸う気にもなれません。
しばらくエビラフジの花の上で佇んでから、また別の花に移動して行ったヒメシジミでした。
ヒメシジミ
Plebejus argus micrargus シジミチョウ科 環境省レッド
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