ゴミ箱へは捨てることがないように 2010.4.19

ゴミ箱へは捨てることがないように

2010/04/19 23:57 に ついついペコ が投稿 [ 2018/09/29 11:45 に更新しました ]

「ゴミ箱へは捨てることがないように」・・・何だと思いますか?


昨年5月、ヤマキマダラヒカゲとモンキチョウを一緒にして、テーブルの上のザルの中で飼っていた時に、チョウを採集する愛好家の一人に言われた言葉です。

一見矛盾しているように思われるでしょうが「決して無駄な採集はしない」そういうチョウ屋さんの一言でした。一つの命を奪っても、標本を自分の研究に生かせるよう、最後まで丁寧な仕方で管理して、大事に、大事に保存して、それを自分の研究として活用しています。そして何よりもチョウを愛しています。


「今後の研究のためならば、多少歪んだ標本でも良いんです」と、おっしゃいました。チョウ愛好家にとっては、展翅に失敗したたった1匹のチョウでさえ、ゴミ箱行きの価値のないものではないと知りました。


また「辛い云い方ですが、命を奪って標本を作るのも、自由の無い籠の中で生かしておくのも、蝶にとっては残酷なことです。私は自分の判断基準で無益なことはしないようにと心がけています」と言われました。同じ基準で考えたら、ケージの中で飼われている鶏も、小屋の中で飼育されている豚たちも、野外で自由に飛ぶチョウに比べたら、はるかに残酷な飼われ方です。でも、そんなことをほとんどの人は考えて飼育していませんし、それを考えて生き物を食べることもしません。


蝶一匹の採集を非難する人たちも、血を吸いに来る蚊を平然とたたきつぶし、餌を求めて部屋に入ってくるハエをハエたたきでたたき殺し、頭から農薬を大量に掛けて、モンシロチョウの幼虫を皆殺しにしています。


私たち人間は実に勝手な生き物ですね。同じほ乳類の牛や豚の肉を、また鶏や魚の肉を「美味しい」、「旨い」と言って食べながら、平然と食べ残し、残飯として捨てています。


でもチョウを愛する人たちが、たった1匹のチョウでさえも、そんな思いを持って価値ある標本を作り、宝物のように大事にすることを知り、生き物の命の重さを改めて考えさせられたと同時に、生き物の命の価値を本当に高く評価している人っていったい誰なんだろうと、考えさせられました。