なんとも涼しげで魅力的なハンノキ林が長野県北アルプス山麓の大町市にあります。
✳︎ ハンノキには種類が多く、実際はケヤマハンノキだろうと思われますが、ミヤマハンノキ、ヤマハンノキなどとも言われています。葉の形はケヤマハンノキですが、ケヤマハンノキには無毛のものもあるようです。正確に同定ができていませんのでご了承ください。
以前は倒木などで奥に行くことはできませんでしたが、近年は画像のところまで入っていけるので、年に数回訪れています。
ここを知っていて訪れる人はごく僅かですので、コロナ禍であっても滅多に人に出会うことはありません。
カバノキ科ハンノキ属のハンノキは、樹高が20メートル以上にもなるそうです。
林床に木漏れ日が優しく差し込み、ところどころにタチツボスミレやタンポポ、キジムシロなどが咲いていますが、ハンノキは年々成長して大きな木になっています。
葉っぱが大きくなるに従い、見上げると空が少なくなるので、日が差し込む面積も年々減っているのでしょう。年毎に花が減っているのを確認しています。
それに追い討ちをかけるかのように、ある年、周辺の小さな植物の盗掘もありました。悲しい思いもしています。生き物の餌になったのならその種類だけがごっそり根こそぎなくなるということは、まずあり得ませんが、一定のエリアで、あるチョウの食草になっていた植物だけがすべて無くなってしまいました。非常に残念なことですね。
ハンノキが小さかった時には、その無くなった植物も、他の林床の花も数が多かったとお聞きしています。実際私が通い出してから、年々林の中の日差しが少なくなっているのを感じていますし、花の数が減っているのも感じています。
ある年その場で、あるチョウの撮影をしていた人がいました。でもその方のお気に入りだった場所は近年、花の数がめっきり減りました。キジムシロやタチツボスミレですので盗掘したくなるような植物ではないのですが、恐らくその場所に陽が届かなくなったためなのでしょう。その方のお気に入りだった場所は、今では暗く感じます。
下の画像は、ハンノキ林の中で太陽やゴースト、フレアを撮影したものです。見上げた葉っぱの多さから木漏れ日を想像してみてください。
数年前の画像です。撮影したのは太陽です。ほんの僅かな木漏れ日です。
いたずらっぽく見えますが、カメラのレンズが作り出すゴーストを撮影してみました。
これも同じです。
もうちょっとゴーストを増やしてみました。
もっとカラフルにゴーストを出してみました。
以前、【カラフルなゴースト現象:長野県北アルプス】2017.7.28
でご紹介したことがありましたが、その中の一部です。
強烈な日差しをハンノキの葉が遮ってくれますが、林床に届く光が少ないことも事実です。
この林で2017年6月、ハンノキをホストとしていたと思われるオオミズアオを撮影したことがあります。カバノキ科などの植物を幼虫が食べるので、オオミズアオにとっては、最高の発生場所となっていたのかもしれません。
さらに、ハンノキ林周辺には、アサギマダラの食草のイケマや、吸蜜植物などもあります。そこに春の北上のアサギマダラが来ることもあります。クルマバソウで吸蜜していますね。
5月から6月にかけてはアサギマダラの他、サカハチチョウ、アカタテハ、スジグロシロチョウ、スジボソヤマキチョウ、ヒメシジミなどを、夏にはイチモンジセセリ、イチモンジチョウ、コムラサキなどを撮影しています。
ある年には、ハンノキ周辺で渡り鳥のオオルリを観察し、カケスの姿も見ました。木が成長することで野鳥などに憩いの場や住処を提供し、生き物たちが安心して住める場所となっていくのはとっても良いことです。
でも、木が成長することで、日光を必要とする小さな植物が減ってしまうのはちょっと悲しいことです。
林が森となり、花を咲かせる植物が減れば、当然その花に頼って命を繋いできたチョウたちは別の場所に移動したり、吸蜜植物がなくなると減ってしまうのかも知れません。
私がこの林に通い出して数年ですが、周囲の環境は毎年変わってきています。こうした環境がいつまで続くのか分かりませんが、林がだんだん暗くなることによって、そこに住む生き物が変わってほしくないと思うのは、私だけではないだろうと思っています。
それでも、涼しさと爽やかさを与えるハンノキ林が気に入って、年に数回足を運んでいる私です。