見た目は「ちょっとドッキリ」。でもほら「こんなに可愛い」のが、このタマゴタケです。
卵の殻を破って、きのこが出て来たみたいでしょ。
実はこのきのこ、2007年9月に、長野県北アルプス山麓松本市奈川の白樺峠に行った時に、渡りをする猛禽類のワシやタカを観察するために都会から来た女性から見せていただいたものだったんです。
その頃の私は、「赤いキノコは毒だ」なんて先入観もいいところでしたが、まさか赤いキノコに食用があるなんて、思ってもいなかったのです。
「タマゴタケがあったー!ほら、可愛いでしょ」と、私に見せてくださった女性は、満面の笑み。
通常でしたら「そんなベニテングタケ食べられないでしょ」と、返す私ですが、その女性の喜び方を見ていると、その喜びが半端ではないものを感じました。そのために、ついに私は「赤いキノコでも食べられるきのこがあるんだ」と、認識を新たにするはめになってしまったです。そんな訳でその場で、女性が持って来たそのタマゴタケを、ワシやタカと一緒にデータに納めたのでした。
ワシやタカと一緒に小さなキノコを写すのですから、当時私の持っていたカメラにワシやタカは、到底大きくは写っていなかったのです。
2007年はチョウのアサギマダラの渡りを調べ始めた年で、渡りをするアサギマダラと、渡りをするワシやタカを、奈川の白樺峠の同じ場所で見ることができると、誰からともなく聞いていたので、ちょっと関心を持っていたのです。そこで「その場所に何があるんだろう」と、9月半ば過ぎに、勇んで出かけたのでした。
望遠レンズなんて高額ですので、当時持っている訳でもない私がそんなところに行ったのがそもそもの間違いだったのですが、峠の上で見渡せば、超望遠レンズが何十台も、もしかしたら100台以上も並ぶ光景が、広がっていました。空を飛ぶワシやタカ以上に圧倒されました。
私のような18-200ミリ程度のちっぽけなレンズを持っている人は一人もおらず、ほぼ全員が100万円以上もするだろうと思われるような、高級なレンズのカメラを持っていて、どっしりとした三脚にカメラを据えて東の方向を見ているのです。この人たちは何者なんだと思ってしまってもおかしくないくらいです。日本中からそういう皆さんが白樺峠に集まったのでしょうね。
「あっ、サシバだ」とか、「目が赤い!」などと叫ぶカメラマンたちに混じって、私はちっぽけなカメラを空に向けて見るのですが、200mmでは、ファインダーで見ても全く迫力に欠けます。それ以上にそこにいること自体が場違いに感じました。
超望遠レンズで「目が赤い」猛禽類を撮影した男性に、恥を忍んで「見せてください」と近づき、その目を見せていただきました。鳥の名前は忘れましたが、拡大したデータには、ちゃんと赤い目の猛禽類が写っていたのでした。
「こんなレンズ欲しい」と思うのは当たり前のことです。
で、その年だったか、翌年だったか、100万円もするような超望遠レンズは買えませんでしたが、500ミリのレンズを求めたのでした。
実は、そこで欲しいと思ったのはレンズだけではなかったのです。自生しているタマゴタケの写真が欲しかったのです。
アサギマダラに関しては、そこにいたという事実だけで、もうそれだけで良かったのです。マーキングは禁止されている場所で行う必要もなく、別の場所を探せばいいだけのことなのですから。
そこで、地面から生えているタマゴタケをもう一度その場に探し求めたのは、10月に入ってからでした。
山道を登り、林の中をあちこち歩いていましたら、赤いキノコを目にしました。それがこれです。
枯葉の中から顔を出し、赤い傘を広げています。下を見ると、ちゃんと割れたような卵の殻に見える部分があるので、タマゴタケだと確信しました。
その後、採取して持って帰り、食べたような、う〜ん、取らなかったような、食べなかったような・・・採取したのか、食べたのか、10年以上経っているので、正直なところ記憶が鮮明に蘇って来ません。
私の満足は、タマゴタケが自生している姿を写真に収めることだけでしたので、きっと採取したかどうかは記憶に残らなかったのでしょうね。
という訳で、「赤いキノコでも食べることのできるキノコもあるんだ」と言うことを知ったので、ご紹介させていただきました。と言っても、各自の体調や体質、調理方法なども影響するかもしれませんので、食用と名の付くキノコは絶対大丈夫とは断言できません。悪しからず。雑談が長すぎて、ごめんなさい。
タマゴタケ Amanita caesareoides (学名はウィキペディアより)
テングタケ科