【アカボシゴマダラ大陸亜種との出会い:東京都と埼玉県で】2020.8.28

春の白化型のアカボシゴマダラと2019年に初めて東京で出会ってから、かなりその存在が気になっていました。最初は「滑空する〜!大きい〜!白い・・・なに、あのチョウ!」と言った感動だったのですが、生態系被害防止外来種ではなかったなら、きっともっと感動したに違いありません。そんなアカボシゴマダラ大陸亜種を今年は、希少種のゴマシジミ 、オオイチモンジなどの撮影を泣き泣きあきらめながら、埼玉県で定点観察です。

東京での出会いから1年ちょっと。最近、環境省のいきものログ https://ikilog.biodic.go.jp/ に、登録を始めました。目撃したり撮影したデータを、画像付きで登録できるサイトなのですが、ご存知の方も多いのではないかと思います。関心がある方はご覧になってください。

上の画像は、アカボシゴマダラ大陸亜種の春の白化型です。2019年に東京都足立区の公園で撮影したものです。

【樹液に集まるオオムラサキと昆虫たち:長野県北アルプス山麓】2020.8.1」でも少し触れたのですが、この撮影のために怪しい人物と誤解され、携帯のカメラを向けられてしまったくらいです。「チョウチョの撮影をしているんです」と大声で叫んだら、その方は家の中に入って行きましたが、公園の近くには民家があること、カメラの先をもっと意識しないとけないと、反省しました。

画像を見れば分かる通り、ツツジの時期で、爽やかな5月です。そんな時に出る個体は白化型だと言うことを調べてやっと分かった次第です。

その翌日、別の公園でまた白化型を目撃しました。それが上の画像です。これが滑空していたのです。「白い、大きい」と言うのは、この子が私のすぐ近くに来て、その斑紋をしっかり見せてくれたから分かったんです。「ゴマダラチョウとは違う。スジグロシロチョウとも違う」素人の私にさえもその違いは分かりました。この時の感動は今でも忘れられません。滑空がかっこいいとさえ思えたんです。

さらに別の個体が公園内を舞っていました。樹木が生い茂る所には柵があって入って行けませんでしたが、池のある公園で「生き物の捕獲を禁止している」とのことでした。「アメリカザリガニもいて、夏休みには子供たちと取って食べる。ゴマダラチョウの幼虫の食樹のエノキもあって、枯れ葉は処分することなく、木の下にためている・・・」などと、話してくださいました。ゴマダラチョウもいるそうですが、蛹は確認できませんでした。

そんな東京での体験があったために、「生態系被害防止」さらに「特定」と言う冠が付いたとしても、やはり、もうちょっと観察して撮影したいと、ずっと思っていました。なんと言っても長野県では記録は今までで3例。それほど採集例がないのですから。

そんな折、今年は埼玉県内でアカボシゴマダラを探していると、滞在先から意外と通いやすい範囲にいたんです。と言うわけで、可能な日は撮影し、それを「いきものログ」に登録を始めたと言うわけです。

そこにいたゴマダラチョウも撮影し、確認できた頭数から、在来種のゴマダラチョウとアカボシゴマダラのグラフを作っています。ちょっとまだ未完成で公開できる状態ではないのですが、どのくらいの比率でアカボシゴマダラがいると思いますか?そこを知りたいですよね。そのうちここで公開したいと思いますので、もうちょっとお待ちください。

ということもあり、この記事は記録中としてください。後日変更もあります。

で、埼玉県富士見市で最初に出会ったのが、上の子です。コナラの木の5、6メートル上の方にいて、カナブンなどとともに樹液を吸っていました。 なかなか降りてきてくれなくて、大きな画像で撮影できない歯痒さを感じていました。

ゴマダラチョウもこの近くの高い場所にいて、時々撮影には苦戦していましたが、コナラの樹液は木の下の方にも出ており、そこにやって来てくれることも多くなり、撮影が楽になりました。

でも、オオスズメバチなども一緒にいることも多々あり、数年前に一回刺された経験を持っているので、ちょっとビビりながらの撮影となりました。

その後、500mmのレンズを一回だけ持参して撮影に励みました。それが下の画像です。

後日ご近所さんに言われました。「大きなカメラを持って来ていましたよね。良い写真撮れましたか?」って。「ちゃんと見ているよ」なんて言われて、「今度は民家に大きなカメラのレンズの先を向けなくて良かった」と、思った次第です。

撮影した画像を見せながら「アカボシゴマダラという生態系被害防止外来種がいるので、定点観察なんです」なんて言いながら、ご近所さんたちとも仲良く会話しながらの撮影でした。

ところで、外来種と言われる動植物も希少種とともに、長野県内の北アルプス山麓を中心に撮影してきた私です。挑戦したくてもその時期に別の種と重なってしまい、結果的に産地は知っていても撮影できていない種も結構あります。

法や条例で規制されている希少種に非常に興味を持って取り組んできたため、希少種の周辺には、その生きものたちを支えているかのようにたくさんの植物の外来種を目にしてきました。希少種と外来種って、実に不思議な関係ですね。

その中で特に「生態系被害防止」などと言う冠が付き、私たちや生きものたち、そしてそれを支えてくれている植物を大きく取り囲んでいる大気や土壌などにさえ(?)「被害」などでもあるかのように大きな悪影響を及ぼしていると言われているものが非常に多く存在しています。そのため、ますます外来種に興味を持ちました。アカボシゴマダラ大陸亜種は、その中の一つなんです。

はっきり言って私は、いちいちそんなこと考えないで生きてきたわけです。外来種の多くが、本当に生態系に大きな被害をもたらしているのでしょうか?どの程度なんでしょうか?

微々たることしかできないのは分かっていますが、確かめたくなりました。そこで、埼玉県に滞在している間はできるだけ観察して撮影しようと、カメラ持参で生息地にせっせと出かけました。

和名はアカボシゴマダラといいますが、ちなみに英名ではと調べてみましたら、Red ring skirt。赤い輪のスカートですって。黒地に白い模様があり、そのスカートの裾に赤い丸があるって、お洒落だなと思いませんか?裾は非常にデリケートで、時々スカートの裾が傷ついている個体を見ています。新鮮な個体でも縁はすぐ傷付くようで、いかに翅がデリケートなのか、現場で毎回確認できました。

当然カナブンや、スズメバチなども混じって樹液のレストランで場所争いも生じていますし、野鳥のオナガもいますので、突かれたようなビークマークも翅に残っている個体も見てきました。下の個体などはその良い例です。

でも前翅の一番上の翅脈は、アサギマダラよりも頑丈で、しかも力強く感じました。アサギマダラをマーキングしているので、その感触を覚えているのですが、手でジャンケンのチョキを作って翅を挟んだ時の感触は全く違い、驚きました。逃げようとする時のその力強さはアサギマダラ以上に感じています。

ところで、子供の手ほどの太さになり、丈は大人さえも軽く追い抜いてしまうほどのオオブタクサがあちこちに繁茂し、種をこぼしてどんどん広がっているのを、長野県内で話題にもなり、またよく目にしています。外来種のオオブタクサをご存知でしょうか?農家の方ならご存知の方も多いのではないかと思います。そのオオブタクサのようにアカボシゴマダラ大陸亜種も、関東圏を中心に広がっているようです。決して今となっては珍しいわけではなさそうです。

本来日本にいるアカボシゴマダラは奄美亜種であって、奄美大島と限られた島にしかいないそうです。実際に見たことはありませんが、後翅の裾にある赤い斑紋の丸が切れていないのだそうです。実物を見てみたいですね。まさにred ring なのでしょうね。

でも大陸亜種には時々丸い斑紋もあるのですが、殆どの赤い斑紋は三日月みたいに輪が切れています。見た目ではそんな違いがあるそうで、もし大陸から持ち込まれたと言う大陸亜種が日本中に広がって奄美大島にまで行ったら、奄美亜種の遺伝子にも影響を与えてしまうなどの危惧もあるようです。

下の画像は、赤いリングが繋がっていたり、切れたりしていますね。たまにはこういう個体もいます。

さらにエノキの葉を植樹としているゴマダラチョウやオオムラサキなどとの競合もあるようです。

個人的にはそれほど恐れる必要があるのだろうかと感じていましたので、調査するつもりで、たまたま発見した一地点だけを選び、定点観察をしてきたと言うわけです。

暑い夏を都会で過ごしたのは学生時代以来のことですが、北向の玄関前に設置した温度計では、最高42℃を記録しました。そんな暑さの中、アカボシゴマダラやゴマダラチョウたちは樹液を吸うだけで生き抜いていることを思うと、本当にその生命力の強さを感じます。逞しいですね。

続きはまた書きます。グラフも作成中ですので、徐々に掲載していけたらと思っています。


《続編》

【アカボシゴマダラ大陸亜種と在来種のゴマダラチョウの観察:埼玉県富士見市で】2020.11.29


アカボシゴマダラ大陸亜種 Hestina assimilis

奄美亜種以外のアカボシゴマダラは、外来生物法(平成29年11月27日公布、平成30年1月15日施行)により、「生態系被害防止外来種リスト掲載種」の中の「特定外来生物」に指定されています。


  • 外来生物法について

https://www.env.go.jp/nature/intro/1law/outline.html

外来生物法に触れるのはあくまでも生きたものに限られ、死骸は該当外です。


  • 要注意外来生物について

過去にあった「要注意外来生物」は平成27年3月に廃止され、生態系被害防止外来種という扱いになったそうです。当時の要注意外来生物には148種類含まれていたようですが、生態系被害防止外来種になってからはさらに増えて、429種類になったそうです。
  • 外来種のくくりについて

環境省の「日本の外来種対策 防除に関するQ&A」をご覧ください。

https://www.env.go.jp/nature/intro/3control/qa.html

まず「外来種」があり、その中に「侵略的外来種」 があり、さらにその中に「生態系被害防止外来種リスト掲載種」があり、さらにその中に「特定外来生物」があります。奄美亜種以外のアカボシゴマダラは、「特定外来生物」に含まれています。

上記の環境省のホームページによると生態系被害防止外来種のリストに掲載されていても、特定外来生物以外の種類は外来生物法の規制の対象にはなっていないとのことです。
  • 個人での扱いについて

「外来生物法に関するQ&A」をご覧ください。

https://www.env.go.jp/nature/intro/1law/qa.html昆虫は魚ではないですが、同じことが当てはまります。「キャッチ・アンド・リリース」は問題がないようですし、「釣った特定外来生物をその場で締めた上で、持ち帰って食べることも問題ありません」とあります。